ひのきの棒(Lv.1)@文系博士院生の社会人

社会人として働きながら、博士課程で哲学を研究しています。専門は和辻哲郎の存在論。文系博士が生きていける社会をつくりたい。

研究を円滑にするための大学院選び

最近毎日ブログ書いてますね、ひのきの棒(Lv.1)です。

 

 いまの時期、就活戦線も少し落ち着いて来て、大学院選びを始めないとと思っている学部生・院生さんの方が多いのではないかなと思うので、自分的に気にしておいた方がいい観点を載せておきます。

 僕は実をいうと全くそういう研究をしておらず、「京大の鴨川デルタで川を眺めたい」「鴨川の近くでのんびりと暮らしたい」と思って京大にしましたし、正直研究室も哲学系ならそんなにこだわりもなかったんですが、自分のテーマ的に一番近いことと、先生が怖くなさそうだったという理由だけで決めました(今考えるととんでもない笑)

 

 でも一つ言えるのは、朝の鴨川は本当に美しく、これだけはすべての人におすすめです。ゴミ出しのために朝早く起きても、とにかく美しいので全く嫌になりません。

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 早朝の鴨川ですが、実際に見ると空気の匂いやひんやりとした感触、鳥の声、河が静かに流れる音などが織り交ざって最高です。これだけでも京大はおすすめです(あと同志社

 

 そんなことは置いておいて、実際問題大学院を選ぶときにはいくつか見ておいた方がいいことがあるのでここにリスト化しておきます。

 

 

結構多くなってしまいましたが、これだけ見ておけばかなり院進して事故を起こす確率は非常に下がるかと思います。

 以下ではそれぞれの項目の詳細を説明しましょう。

1指導教官・研究室の専門分野・テーマ

 これは当たり前とも思われるかもしれませんが、自分が論文を提出するのは日本だと結局は指導教官で、主査の指導教官に「NO!」と言われれば何を書いても卒論は通りません。

 ですから、指導教官とあまりにかけ離れた分野をやってしまうと理解をしてもらえないことや、指導の際に適切ではないアドバイスをされてしまう確率が上がってしまいます。確かに教授は当該分野については幅広い知識を持っていますので、少し違うくらいであれば全く心配はありませんが、「本当にこの分野で合っているのだろうか」という部分についてはちゃんと吟味すべきです。*1

2指導教官の年代

 こちらは「指導教官が途中で変わる」というリスクについてです。一般的に、知識については問題ないと思いますが、教授は人格者ばかりではありませんので、「教授が変わってから折り合いが悪くなり研究が思うように進まない」といった状況に陥るのは出来るだけ避けたいです。

 ただ、たった少しであっても「この教授の下で勉強・研究したい!」という強い想いがある場合はそちらを優先して良いと思います。研究者というのは基本的に信念を曲げると死ぬ生き物でもあるので、そうした部分で無理をするとずっと後悔が残ってしまうでしょう。

3返信メールなどの文体・内容(相談メールなどを送った場合)

 もし自分の研究したいことがマッチするかを確認したい場合は、下手にネットだけで調べるのではなく、しっかりと将来の教官候補の先生に、「こういった研究をしたいのですが、そうした研究は貴研究室では指導可能でしょうか。」とちゃんと質問しましょう。先生方もわざわざ嘘をついたりはしませんから、返信の内容について疑う必要はありません。

 ただその際に、非常にぶっきらぼうでよく分からない返信をする先生や、的を射ない回答、またはそれ以前に「考える気がなさそうだな」みたいな答えをする先生がいた場合には、あまりおすすめできません。

 先生は忙しいものですが、それでも出来るだけ丁寧に答えて、この学生の研究を実りのあるものにしたいと思っているならばちゃんと返信をするものですし、そうした姿勢自体は自分が院進して研究で困っているときにモロに響いてきます。

 個人的には「院生には優しいが院生以外にはとても冷たい」という人はあまりいないと思っており、学究に携わるものには本気で応答するのが真っ当な姿です。

4同じ分野の院生の一年代あたりの人口

 大学院にどういうイメージを持っているのかは分かりませんが、基本的に大学院時代に話すのは同期や先輩・後輩です。僕自身優れた同期が何人もいたおかげで大変な刺激をもらいましたし、そもそも研究とは本質的に孤独な作業なので、そうした孤独を共有できる近しい仲間が周りにいることはメンタルを維持するためにも重要です。

 もちろん研究室にも毛色があり、一概に「多ければ多いほどいい!」とは言えませんし、何故か性格的に極端な学生ばっかり集まる研究室というのもあることにはあるのですが、そういう所についてはガチャなので諦めてください。人生は不確実性と共存するゲームなのです。

5教員の数(教授・准教授・助教授全員)

 さて、続いては「教員」の数です。研究の指導において、結構重要になるのは准教授や助教授などのメンツです。というのも、研究室にもよりますが、教授は忙しすぎて顔を出さないことが多く、実質的に指導やアドバイスを行ったり、細かいところで道に迷った子羊を導くのはこうしたバックアップ陣営であることがしばしばあるからです。

 例えばある研究室では教授が一人だけの場合なんかもありますが、そういう所は(当たり前ではありますが)困っても独力で切り抜ける覚悟をする必要があります。

 またそうでなくとも、大学院での講義において、自分と近しい分野を講義するのは自分の研究室や専門の先生なので、講義のバリエーションという意味でも准教授や助教の存在は思った以上に大きいものだと思っています。

6研究室の有無

 ここまでは割と研究室という単位が存在する前提でしたが、大学には「研究室というものがない」という大学も数多く存在します。僕はDiscordのサーバーを運営するまでは大学院生には大体研究室的なものが与えられていると勝手に思っていましたが、そんなことはありませんでした。そういう大学は授業としての「ゼミ」はあっても「研究室」を設置していません。

 もちろん自宅作業だけで進めるのが好きな人はここはあまり重要な論点ではありませんが、僕の場合は、一般的なインプットの場合は研究室で、論文が進んできて完全にブーストを入れるときは自宅で、みたいに切り替えのスイッチとして使っていました。

 研究は基本的にマラソンなので、修士の間だけであっても気分転換が出来る場所が一つでもあることや、研究室で同期や先輩たちと話すのは非常に有益です。カフェなどだと、「連絡⇒待ち合わせ」というプロセスが必要ですが、研究室の場合はそういう余計なプロセスがいらないし、そもそもは研究のための場所なので、勉強に集中したい場合にはお互いに不干渉でいられるので非常に気楽です。(店員に話しかけられたりするのが苦手)

 なお、文学研究科には研究室があっても法学研究科には存在しない、みたいなケースもザラにあるので、例えば専門を変える場合などは特に注視しておきましょう。

7大学・研究室の入構時間

 特に国公立から私立に行く人などに注意して欲しいのですが、「どの大学も24時間開いている」とは絶対に思わないでください。大学を開けるためには警備員を雇用したり電気代のコストがかかるため、私大だと24時間開いていないことがほとんどです。

 こういう事柄は大学内部の人間はそれぞれ「当たり前」だと思って生活しているのでウェブサイトにのっけていない場合も多いですが、「〇〇大学 入構 時間」とか調べると意外と出てきます。あとこれでも出てこないときは、逆に「○○大学 入構 禁止」とかを検索すると出てくることもあります。東大京大は24時間開いていますが、それ以外については確認しておきましょう。

 大学で作業をしていると時間はすぐに経つので、20時に入構時間が終わるとかだと大変面倒です。研究が盛り上がってきたときに打ち切られるのはストレス以外の何ものでもありませんし、僕もM1の頃とかは2時くらいまで残って色々やって、深夜に煙草吸って帰るみたいな生活をしていました。

 もし家と研究室の二か所を拠点に研究したい人は、こういう細かい部分も確認しておくと一切後悔がありません。

8カバーしている分野の広さ(アカポス狙いの場合)

 僕はアカポスに興味ありませんが、まだアカポスを狙う方はかなり多いと思います。そういう方は「この研究室で博士を取ったら、どんな授業を担当できるだろう」というのは想定しておきましょう。

 例えば僕の場合は「日本哲学」という異常に狭い範囲で、そもそも日本で開講している大学が他にはないため就職には向きません。逆に倫理学などであれば、「倫理学」も「哲学」も対象の国によっては「語学」も行けるかもしれません。こうしたように、同じ「博士」でもその学位によってどれくらいの種類の講義を持てるのかは変わってきます。

 もしアカポスを狙うのであれば、ある程度の打算性も必要となるでしょうし、そうした観点については院進する前に考えてみると良いでしょう。またはその研究室のOB/ODがどこで何を教えているのかをネットで調べるとよいと思います。

 ちなみに個人的に、語学に強いのは文学(詞・韻文)>文学(散文)>哲学かなと思っています。京大の独文とかは修論が基本的にドイツ語(D進する人限定)だったりするのでかなり強いでしょうね。

9その土地が好きかどうか

 人によっては僕のように「ここで住みたい!」みたいな動機で大学院を選ぶ場合もあるかと思いますが、そういう場合はもうそこに行っちゃいましょう。この理由はさっきもあげましたが、研究者を目指そうとする人は基本的に衝動に従った方が後悔がないと思います。「やる後悔よりやらなかった後悔」みたいな言葉もありますが、僕はこれに結構従って生きているので、個人的には「好き」という想いがあるなら突き進んだ方が良いと思います。

おわりに

 本当に申し訳ないことに、えらい長くなってしまいました。。ちょっと神経質な方の性格が出てしまったかもしれませんが、僕がいま考えて思いつくのはこのくらいです。

 大学院に行って人生台無しになったとか、メンタルぶっ壊れたとか、そういう事態は事前の調査で結構避けられるとも思いますので、以上の部分については見ておくと良いかもしれません。

 

*1:※例えば僕の場合は「権利」に関するものを着地点に置きたかったので、存在論か、政治哲学か、法哲学か、政治思想なのかという部分で非常に悩みました。